コンサルや監査法人への転職で、意外と見落とされるのが「株」の扱いです。実は、働く会社によって、自社株や個別株との付き合い方がまるで違います。持株会でちょっとした役得がある会社もあれば、監査法人が絡むために個別株の売買が原則できない会社もある。今回は、元クニエで持株会に入り、いまはPwCの案件に参画している私の経験も交えつつ、公開情報をもとに、コンサル・監査法人の”株事情”をフラットに整理します。これは制度の解説であって、投資を勧めるものではありません。
前提:従業員持株会とは
まず基礎から。従業員持株会は、給与天引きで少しずつ自社株を買っていく制度です。多くの企業で拠出額に5〜10%ほどの奨励金(会社からの上乗せ)が付き、ここが最大のうまみ。ただし持株会の中では自由にすぐ売れず、一定株数を個人の証券口座へ移してから売却する、という手順が一般的です。当然ながら、これは自社が上場している会社の話。非上場のファームには、そもそも市場で流通する自社株がありません。
クニエ(NTTデータ系):上場廃止で持株会が”ウマかった”
上場企業グループならではの役得を、私も味わいました。元クニエ(NTTデータの完全子会社。現・フォーティエンス)在籍時、親会社NTTデータの上場廃止が発表され、株価が大きく上昇。持株会に入っていた人は、上場廃止に伴ってその水準で売却でき、なかなか美味しい思いをしました。私は短期在籍でしたが、それでも80万円ほどのプラスに。上場企業(グループ)で働くと、こういう資本イベントの恩恵が、従業員の懐にも届くことがあります(この話は クニエの年収記事 でも触れています)。
【逆に】BIG4・監査法人系は「個別株が持ちにくい」
対照的なのが、監査法人が絡むファームです。監査法人は「独立性(インディペンデンス)」という規制を守る必要があり、監査の中立性を担保するため、役職員が監査クライアントや制限対象銘柄の株式を保有・売買することが厳しく制限されます。ポイントは、この制限が監査部門だけでなく、同じグループのコンサル部門の従業員にも及ぶ場合があること。BIG4(デロイト・PwC・EY・KPMG)のように監査法人と一体のグループでは、コンサル職でも個別株に制約がかかることがあります。
一般的な運用としては、個別株の売買は原則制限、投資信託やETFは可(ただし保有証券や証券口座を会社に申告・登録し、購入前に承認を得るといった手続きがある)というかたちが多いようです。実際、PwCは公開資料の中で、保有証券を登録・チェックする独立性システム(Checkpointなど)や、監査クライアントを確認する仕組みを持つと説明しています。
PwCでは、保有株を”全部登録”するポータルがある
ここは私が案件に参画していて実感していることです。PwCには、自分が保有している株式をすべて登録するポータルがあります。何を持っているかを会社側が把握し、独立性に抵触しないかをチェックする仕組みです。中に入ると、「株は自由に売買できて当たり前」という感覚が、監査法人系ではまったく通用しないことがよく分かります。
ファームごとの厳しさの差について。「EYやPwCは個別株の取引が原則NG」「デロイトやKPMGは監査対象でなければ可」といった話も聞かれますが、公開情報を調べた範囲では、ファーム間の厳しさに一律の序列があるとは断定できませんでした(むしろ「KPMGが特に厳格」とする解説もあります)。制限の細部はファーム・職種・国によって異なるので、気になる場合は必ず志望先の規程で確認してください。
アクセンチュア:15%割引で自社株が買える(ただし海外口座)
監査法人を持たないファームは、話が変わります。代表例がアクセンチュア。同社には従業員株式購入制度(ESPP)があり、市場価格から15%ほど割引で自社株を購入できるとされます(アクセンチュアは米国市場に上場しています)。これは資産形成の面では魅力的な制度です。
ただし一点、実務的な注意も。ESPPで買った株は、米国側の株式管理会社の口座で管理されるのが一般的で、日本の従業員にとっては売却や換金の手続きがやや煩雑になりがち、という側面もあります(この「手続きの手間」は、海外口座管理のESPP全般に言える一般論です)。割引で買える魅力と、売却の手間。両方を知っておくと、制度をうまく使えます。
まとめ:株の観点でも、会社選びは変わる
整理すると、こうなります。上場企業グループ(クニエ/NTTデータ系など)は持株会や資本イベントの役得がある。監査法人系のBIG4はコンサル職でも個別株が持ちにくい。アクセンチュアのような非監査系の上場企業は、割引での自社株購入という制度がある。年収や社風ばかりが注目されますが、「資産運用の自由度」も、実は会社によってかなり違うのです。転職時の隠れたチェックポイントとして、頭の片隅に置いておくと役に立ちます。
注意。本記事の制度・割引率・制限の内容は、会社・年度・職種・国によって変わります。独立性規制の詳細や、実際に株を保有・売買してよいかは、必ず各社の規程や専門家に確認してください。これは制度の一般的な解説であり、特定銘柄や投資行動を勧めるものではありません。
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