「PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)」という言葉、転職市場ではよく見かけます。でも「結局、何をする人なの?」と聞かれると、意外とはっきり答えられない——そんな方は多いはずです。求人票に「進捗管理」「課題管理」と書いてあっても、実態が見えてこない。
私は、事業会社(NEC)でPM/PLとしてプロジェクトを回したあと、コンサル(クニエ)でPMOを経験しました。両側から見たからこそ言えることを、教科書的な定義ではなく“現場のリアル”で書きます。そして最後に、あまり正直に語られない「PMOだけを目指すべきか?」という本音まで、包み隠さずお伝えします。
まず、PMOとは
PMOは、プロジェクトを推進するPM(プロジェクトマネージャー)を支え、プロジェクト全体が円滑に進むように横断的に支援・整備する役割です。よく挙がる仕事は、進捗管理、課題・リスク管理、会議体の運営、資料整備、関係者間の調整など。ただ、こう言葉を並べると「事務方」「管理係」に見えてしまう。ここが最大の誤解です。実態はもっと泥臭く、そして価値のある仕事です。
現場のリアル①:小さなプロジェクトを何本も回したNEC時代
私がNEC時代にいちばん苦労したのは、小規模なプロジェクトを複数、同時並行で回すことでした。時には“一人プロジェクト”まであった。小さい案件は、とにかくお金も時間もありません。だからこそ、やれることを——なんなら契約を待たずに——全速力でやり切って、どうにか着地させる。この「限られた資源で止めずに着地させるバランス感とスピード感」が、本当に大事でした。
判断力も、スキルも、そして体力と健康も、全部が要る世界です。派手さはないけれど、ここで身につけた「資源が足りなくても前に進める力」は、後のPMOでも効く土台になりました。
現場のリアル②:大規模プロジェクトを複数人PMOで回したクニエ時代
コンサル(クニエ)では一転、大きなプロジェクトを、複数人のPMO体制で回す側になりました。ここでの難しさは、大きく2つありました。
ひとつは、すでに現場でバリバリ信頼されているPMOメンバーの中に、後から加わって自分のバリューを出す難しさ。出来上がったチームに入って「で、あなたは何ができる人?」に応えるのは、想像以上に大変です。
もうひとつは、ユーザー側PMOとベンダー側PMOで、立ち回りがまるで変わること。同じ「PMO」でも、発注する側に立つのか、受ける側に立つのかで、見るべきものも振る舞いも別物になります。ちなみに、SIer出身なら勝手が分かっているぶん、ベンダー側PMOの方が楽に感じました。
私が経験した2つの現場——ひと口にPMと言っても、形はさまざま
あくまで私のケースですが、NECでは小規模な案件を数多く回し、クニエでは大規模なプロジェクトを体制で回しました。ただ、これは「事業会社=小規模、コンサル=大規模」という話ではありません。事業会社にも大規模PMはありますし、コンサルにも小回りの案件はあります。PMと一口に言っても、規模も立ち位置(推進・支援・ユーザー側・ベンダー側…)も本当にさまざまで、ここで挙げたのはその一例にすぎません。大事なのは、いろいろな形の現場を経験するほど、“プロジェクトを前に進める引き出し”が増えるということです。
【本音】市場価値として、PMO“だけ”はどうなのか
ここは正直に書きます。まず、PMスキルそのものは市場価値が高いです。専門性としてのプロジェクトマネジメント力やリーダーシップを、ちゃんと持っている人は、実はそう多くありません。
ただし——“PMO経験だけ”だと、正直ちょっと物足りない、というのが私の本音です。定型的な管理業務の部分は、個人的には今後AIが担っていく感覚もあります。なので「PMOになること」自体を目的化するのは、私はあまりおすすめしません。ここは、PMOを勧める記事の多くが言わない本音だと思います。
だから、賢い“見せ方”は「専門性が主役、PMは当然できる」
ではどう戦うか。答えはシンプルで、PMOを主役に押し出すより、自分の専門性(IT・インフラ・セキュリティ・業務ドメインなど)を軸に据えることです。そのうえで、「その専門性に加えて、PMくらい全然できますよ」という見せ方をする。これがいちばん好印象だと感じます。
専門性が、あなたの核。PM/PMOのスキルは、その核を大きく動かすための“掛け算”です。この順番を間違えないこと。「PMOやりたいです」より、「◯◯の専門家で、プロジェクトも回せます」の方が、圧倒的に強い。(この“掛け算”の考え方は、インフラエンジニアが「きつい」と感じたら|経験を“掛け算”してコンサルで希少人材になる方法でも詳しく書いています)
PMOに向いている人
とはいえ、PMO的な動きそのものが合う人もいます。視野が広い人。コミュニケーションが強い人。そして、計画を綿密に練って、それがうまく回っていくのを眺めるのが好きな人。もしこれに当てはまるなら、あなたの専門性とPMOの掛け合わせは、かなり強い武器になります。
まとめ:PMOは「管理」ではなく「前進をつくる」仕事
PMOは、指示された作業をこなす管理係ではありません。限られた資源の中で、あるいは大きな体制の中で、プロジェクトを止めずに前に進める仕事です。その経験は、確かに市場価値になります。
ただ、転職で本当に強いのは、「PMOになる」を目的にすることではなく、自分の専門性を核に据えて、「PMもPMOも回せます」と見せること。もし今、自分の経験をどう組み合わせて見せればいいか迷っているなら、そこは一緒に設計できます。
あわせて(動画):NEC→クニエのPM/PMO経験を全編で
この動画の背景や見どころは、【メディア出演】『プロジェクトマネジメントの教室』出演記事にまとめています。
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